「ギャッベと言っても色々な種類がありますよね。」とお客様からお話しをいただくことも数年前から多くなっています。一方で、「いろいろあるのでどうやってみたらいいかわかりづらくて・・・」という声も耳にします。そこで今回、本場のイラン製ギャッベから、ギャッベ柄の機械織りラグまで、ギャッベと呼ばれるラグにはどのような種類があるのかをまとめてみました。
目次
・ギャッベと呼ばれるラグの種類
・これが本場!イランの伝統的な手織り絨毯ギャッベ
・インドで手織りでつくられるギャッベ
・はた織りでつくられたギャッベラグもインド製
・番外編ギャッベ柄の機械織りラグ
ギャッベと呼ばれるラグの種類
ギャッベの種類、と言ってももともとはひとつしかありません。ギャッベはペルシャ地方、イランの南西部のカシュガイ族という遊牧民族の絨毯がルーツ。その伝統的なギャッベが現代のデザインや技術と出会い、より幅広いデザインと高い品質となってきたのが現代のギャッベと言えるでしょう。そんな中、どのような業界、どのようなものでも同じ運命をたどる場合が多いと思いますが、イランのギャッベに影響を受けたさまざまなギャッベがつくられるようになりました。
ギャッベもいろいろありますよね、とおっしゃる方もいらっしゃる中で、今回ギャッベと呼ばれている絨毯の種類についてわかりやすく整理してみたいと思います。
ギャッベとして販売されている、もしくはギャッベと呼ばれているラグの中には以下の4つがあります。
① イランの伝統的な手織り絨毯ギャッベ
② インドで手織りでつくられるギャッベ
③ 機織り機でつくられたギャッベ
④ ギャッベ柄の機械織りカーペット
これが本場!イランの伝統的な手織り絨毯ギャッベ
ギャッベの歴史は数百年前にさかのぼります。標高の高いイランの高地、ザクロス山脈のふもとで遊牧生活を続けるカシュガイ族という遊牧民族が、自分たちの暮らしの道具として羊毛を使った手織りの絨毯をつくりはじめ、伝統的に伝えられてきました。いつしか果物の皮や草木で染められるようになり、模様も織り込まれるようになった絨毯ギャッベの伝統は、やがて現代化の波にさらされてだんだんと伝統が失われつつあったのです。そんな中で、伝統的な草木染めや、モチーフのデザインを現代の技術と感覚とともに残し続けようとする方たちの取り組みの結果、欧米からギャッベの人気に火が付き世界へと広がり、今では世界の中でも日本で最も愛される絨毯となっていったのです。
イランのギャッベの中でも特に上質なものはその肌触りのやわらかさと、踏み心地の良さが特徴となっています。もともとのイランで織り始められた頃のデザインや品質と比べると、ずいぶんとデザインの幅も広がり、織りの品質が高くなっているのが現代のギャッベと言えるでしょう。
より素朴なギャッベを求める方には少し時代をさかのぼったギャッベの方が魅力的にうつるかもしれません。しかし、伝統とは変わり続けること、と考えると、ギャッベの変化も必然と言えるのかもしれません。これからもギャッベは少しずつ時代の影響の中で変化し続けていくことでしょう。
インドで手織りでつくられるギャッベ
もともとイランで生まれたギャッベですから、インドギャッベはその影響を受けて作られたものと言えます。インドギャッベの中でもここでは手織りのものについてご説明します。インドでも手織りの絨毯の伝統が長く続いています。しかしイランのペルシャ絨毯や一時期、日本でも人気の高かった中国の段通と比べると、世界的な市場でスポットが当たる機会はそれほどありません。何より、手織りというとやはりペルシャ絨毯の国であるイランの伝統と技術が群を抜いていると言えるでしょう。
そんな中で、世界的に人気の高まるイランのギャッベに注目した人が、インドでもギャッベ柄の手織り絨毯をつくってみよう、ということでインドでつくられるようになりました。これはインドに限らずですが、手織りの絨毯はやはり手仕事の極みと言えるので、一枚一枚その品質が大きく異なってきます。インドギャッベもそのものによってやはり大きく異なるので簡単に説明することはできないのですが、本場イランのギャッベに比べると、糸の太さが太く、デザインもシンプルなものが多いのが特徴です。
比較的同じデザインのものがつくられている場合が多いので、そのデザインでこれはインドでつくられているものかな?と感じる場合もあるかもしれません。
価格帯も一概には言えないのですが、例えばリビングのサイズでイランのギャッベが30万円くらいのものだったとした場合、インドのギャッベは15万円ほどが目安となるでしょう。どちらかというと、人気のある絨毯を他の国でつくる目的としてひとつはコストを抑えることがあげられるため、羊毛の品質もイランのギャッベと比べると全体的に違いがでてくるものが多くなっています。イランの上質なギャッベがやわらかく、織りの細かさからくる弾力があるのに比べると、インドのギャッベはかなりがっしりとしていて厚みがあるものが多いのも特徴です。
はた織り機でつくられたギャッベラグもインド製
続いてはた織り機でつくられたギャッベ。実はこちらもインドでつくられています。先ほどの手織りのインドギャッベに比べて、さらに見た目の違いを感じるのが機織りのギャッベです。手織りのものと比べると、よりはっきりした表情になっています。
手織りで、イランのものでないとギャッベと言ってはいけない、という決まりはどこにもありませんから、こちらもギャッベという名前で販売されています。
手織りと比べるとずいぶんとリーズナブルとなり、もしイランのギャッベでリビングのものが30万円ほどだったとした場合、機織りのギャッベは10万円以下、中にはリビングサイズで5万円以下のものもあります。
手織りとはた織りではそもそも作り方が違うため、それぞれに特徴があります。
手織りの場合は縦糸に一本一本指で糸を結んでは切ってを繰り返していきます。そのため、細かく自由な柄や表情を織り込むことができるのが特徴でデザインも本当に様々、自由な柄が織り込まれています。手織りのものは毛の向きが一定方向に向いている関係もあり、上質なイランのギャッベは特に光沢感、見る角度によって表情が大きく変わって見えるなどの美しさを感じることができます。
一方、インドのはた織りのギャッベは毛がまっすぐたっていることが多く、手織りほど細かく表現することが織りの構造上できないため、手織りのギャッベに比べると、はっきりとした表情になってくるのです。モチーフも少しだけ木や鹿が織り込まれているか、もしくはグラデーション、横方向のストライプのものが中心です。
耐久性も手織り絨毯はどの方向からの力に対しても強いため、上質なものだと30年以上使えるものがありますが、はた織りのものは手織りと比べると横に引っ張る力には弱くなります。そのため数年使っていると使い方によってはゆがみがでてきたりすることもあり、耐久性は大きく変わってくるのが現実です。
番外編 ギャッベ柄の機械織りラグ
近年、とても多いのがこのギャッベ柄の機械織りラグです。
完全に機械でつくられたもののため、手織りのギャッベと共通することはデザイン以外それほどないのですが、はた械織りのものにまでギャッベの影響が大きく広がっていっていることこそが、ギャッベの人気の高さを感じさせてくれます。実際にイランのギャッベは特にデザインのバリエーションがとても豊富なことも大きな特徴なので、その中でも特に優れたデザイン影響を受けて作られた機械織りのラグも多くなっています。
こちらは本場イランのギャッベですが、機械織りのカーペットの場合は特に本場イランで人気のこちらのような多色づかいのデザインから影響をうけて作られたものが多くなっています。
ギャッベ柄の機械織りのカーペットが紹介され始めてからもうすでに10年以上たつことも、ギャッベ自体が日本の暮らしに根付いてきている証のひとつと言えるでしょう。
最後にもう1度おさらいです。
〇本場イランのギャッベ
・手織りだからこそ品質はそれぞれ
・草木染めがメインのものと化学染料のものがある
・デザインの種類が豊富でアート性の高いのも特徴
・特に上質なものは肌触りのやわらかさと、細かな織りからくる弾力が魅力
〇インドギャッベ(手織り)
・手織りだからこそ品質はそれぞれ(イラン製に比べると糸が太いものが多い)
・化学染料で染められたものが主流
・デザインはシンプルなものが多い
・全体的にがっしりとしていて厚みがあるものが多い
〇インド製ギャッベラグ(はた織り)
・機織り機でつくられているため、手織りに比べるとはっきりとした表情
・手織りと比べると横にはたらく力に強くないため、手織りほどの耐久性はない
・手織りに比べてリーズナブル
〇ギャッベ柄の機械織りラグ
・手織りのギャッベと共通するのはデザイン
・ギャッベのデザインに影響を受けて作られている
・10年以上市場にでていることが、ギャッベ人気のあらわれ
まとめ
・ギャッベと呼ばれるラグの種類
・これが本場!イランの伝統的な手織り絨毯ギャッベ
・インドで手織りでつくられるギャッベ
・はた織り機でつくられたギャッベラグもインド製
・番外編 ギャッベ柄の機械織りラグ
以上、ギャッベの種類についてまとめてみました。
皆さん、ギャッベのことをわかりやすく感じて頂けましたでしょうか。実際にお店を訪れた際にはその違いを体感してみてくださいね。